Avenue of Mysteries

クリスマスにお義父さんに頂いた本。
ジョン・アーヴィングの最新作「avenue of mysteries」。

ジョン・アーヴィングはとても有名でプロリフィックなアメリカの作家だけど、
映画「サイダーハウスルール」のスクリーンプレイくらいしか彼の作品を知らなかった。



クリスマスに毎年、お義父さんは複数のプレゼントをくれるけど、その中でも本はとても楽しみ。誰かに本を選んでもらうというのは、とても特別な感じがする。年末に日本の友達が日本の本をプレゼントしてくれた。大切に読み切り、本棚にあるのを見ると心がほっこりとする。

古本屋やアンティークショップで、本の裏表紙に、「Dear John, for your 40th birthday - with Love, Linda September 1983, London」とかサインがあると、この二人はどんな関係だったのかな、どんな思いでこの本を送ったのかな、今はどうしてるのかな、どうしてこの本は古本屋にあるのかなと色々思いを馳せる。

今回のアーヴィングの本は約500ページある長編。主人公のジャン・ディエゴの人生が二つの時間層で語られていく。一つは「現在」。ディエゴがアイオワからフィリピンへの慰問旅行へと飛び立つところからその旅路。そしてもう一つは「過去」。ベータブロッカーという心臓病の薬の副作用で抑えられた感情や思い出が、飛行機の遅延のために薬を時間通り飲めなかったことによって次々と蘇っていく。

ジャン・ディエゴの職業は作家で、メキシコ出身。ごみ捨て場で孤児として片親が同じの妹ルーペと育つ。父親のようなリベラが二人をしっかり守っている。ジャン・ディエゴは独学でスペイン語、英語での識字、コミュニケーションがとれるようになり、その才能を聞いたカトリックの宣教師に一時保護される。妹のルーペはジャン・ディエゴにしかわからない言葉で話すので、常に兄が通訳として一緒にいる。ルーペの人の心を読める力、将来を見通せる力が物語のドライブになっていく。

作品のテーマとしては、カトリック教の是非、植民支配の歴史、グアダルーペと聖マリアをめぐるpolitics、セクシュアリティーとスピリテュアリティー、組織化された宗教への批判、喪失など多岐にわたる。幼少期の回想シーンが作品の70パーセントを占めるけど、メキシコが舞台なので、2008年に10日ほど滞在したメキシコの風景を思い出しながら読んだ。実際、舞台となているのはごみ捨て場で、私が行ったのはリゾートと小さな村だったので参考にならないけれど。

読んでみて、正直、つまらなかったー!!!最初の半分くらいかな?楽しんで読んだけど、特に最後の100ページ。ルーペの運命がかなり早い段階で明かされるのに、そこにどうやって到達するのか明らかにするのを引っ張りに引っ張る挙句、物足りない結末。性の問題にプログレッシブに踏み込んでいるのかと思いきや、クッキーカッターみたいな「ミステリアスでセクシー」なたくさんの女性キャラクターの登場に、結局のところコンサーバティブなのか??とちょっと困惑した。そして内容以上に、あんまり文体が好きじゃなかったのかな?何度も同じようなセンテンスが出てくるし、この情報、何回書くのよ??というのが何度もあった。。その分「この人誰だっけ?」とか「この場所どこだっけ?」とかページを逆めくりはしないけど、知ってることを何度も読むのってとても苦痛。。

そしてもう一つ、つまらなく感じたのは、私の無知さによるもの。ジャン・ディエゴというのは、ローマンカトリックで最初の先住民の聖人の名前。ルーペのグアダルーペへのオブセッション、聖マリアへの疑い、カトリックへの批判など、繰り返し登場する宗教的なモチーフ。ルーペの運命に大きく関わるライオンもキリストのシンボルだし、二人の母親は売春婦で「ヴァージン・メアリー」とのコントラストが読み取れる。だけど、それ以上掘り下げて考えられないのが私の無知さによるもの。ちゃんとメキシコでのカトリックの歴史を知っていれば、きっともっと違う角度からこの小説が楽しめたはず。同様に、もっとフィリピンについて知ってからこの本を読み返したいなーと感じた。

とても良かったのは、ジャン・ディエゴを養子として受け入れる宣教師エドワードとフロアーの関係。そこだけ唯一感情移入して読めたような。あとは、「書くこと」についての議論がディエゴとその弟子のクラークを通してされていて、そこにアーヴィングの個人的なストラテジーがどれくらい反映されているのか知らないけど、おもしろかった。

でも、ちょっと疲れたので、アーヴィングはしばらく読まない(それこそプレゼントでもらったりしない限り)かなー。苦笑

もう一冊クリスマスにお義姉さんに頂いた本を読み始めた。こちらは馴染みのある作家なので、すっと読める。アーヴィングはそんなに合わなかったけど、それでも、読んでいくうちに言葉が自然と頭に入ってきて、自分とシンクロしてる感覚になる時、気持ちがいい。セレピューティックになる。

今年はどんな本と出会えるかなあ?とてもたのしみ。

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