第一次

 木版画を学び始めてもうすぐ一カ月。広東語で日記をつけ始めてもうすぐ二カ月。走り始めて七カ月。

どれもとても大切な時間になっている。

もうちょっと釣りを習慣化できたらいいのだけれど、天候に左右されるので、雨が多いこの時期はけっこう難しい。

先月からとにかく、自分のことじゃないことで時間を取られることが多かった。子供やマイケルの体調不良や、子供の早帰りや、ヘルパーさんの不在など、いったいこの生活でどう仕事しているのか自分でもよく分からない。睡眠時間が3時間前後の日々が続いていて、でも自分の体は元気なので、しっかり食べているのがいいのか、それとも締め切り終わったらどっと疲れが出て体調崩すのか、ハラハラしながら、でもできることをやっている。

先週末は木版画の先生の展示会のオープニングに行って、そのこともちゃんと書きたい。たくさん考えることがあった。

そして今日は、はじめて日本語から中文翻訳に挑戦した。日記は口語の広東語で書いているので、書面語とはまた違い、語彙に気をつけながら翻訳した。先生に添削してもらって、発音も練習した。広東語は口語なので、言葉はあるのにだれにも正式な漢字が分からないという現象も起こり、すごく面白い。

どうして詩を翻訳したかというと、いっしょに木版画教室に通うガラスアーティストに、ガラスの波をプレゼントしてもらったからだ。彼女は広東語だけでコミュニケーションを取り、英語がほぼできないのだけれど、詩と本が大好きで、彼女のスタジオは本とガラス細工であふれている。

わたしの木版画のデザインを気に入ってくれて、海が好きならと、ガラスで波を作ってくれた。そのお返しに、詩集をプレゼントすることにして、中文の翻訳をつけた。

 

彼女はずっとガラス細工を作っている。四百点を超える作品を十年にわたって、毎日作る。すべてで「森」を表現している。だけど一度も展示会をしたことがない。すごくきれいで、息をのむような迫力で、それでいてとてもやさしい作品なのだけれど、なんせ400枚以上のガラス細工をいっぺんに展示しなければならず、彼女は展示方法に強いこだわりがある。ちゃんと作品を見せれないのならば、見せなくていい。その方法を必ず見つける、というのが彼女の信念だ。

木版画を一緒に彫刻する人たちは、ほとんどがみんなプロフェッショナルなビジュアルアーティスト。金曜日の夜、深夜近くまでスタジオに残ってみんなで作業をする時間は、 ほんとうにかけがえのない経験になった。広東語で全部コミュニケーションがとれるわけじゃない。まだまだ分からない。だけど話そう、分かろうとすることで、輪が広がるのを強く感じる。

もうすぐ最後のクラス。みんなとお別れするの、すごく寂しい。

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