Puffin

この人の書く文章がとても好きだし、
プロットもよく練られていて、前半と後半のスピードの違い、クライマックスに上り詰める緊張感、素晴らしいと思う。
だけど、今まで読んだイシグロ作品には感じなかった違和感があった。舞台が上海のインターナショナルセトルメントだからなのか、日本人のアキラとの接触の幼少時代と大人時代のギャップからなのか、それとも「チャイナマン」のキャラクターがいづれもあまり現実味を持たなかったからか、物語のスピードが上がるにつれ、少し置いていかれているような感覚になった。
それでも、幼少期を心の指針として、美化しながら、断片を握りしめながら生きてきた孤児バンクスの苦悩と大きな悪に対して立ち向かおうとする固執した正義感、その義務感の中で逸してしまう幾つかの選択肢、払う犠牲、
そしてその全てを根本から覆す告白、真実。
人の人生は、親のいない者の人生は。
いくつもの壮大なライフストーリーを複雑な背景をうまく利用して、きっちりまとめ上げているのは、本当に巧みだなあと感動した。
読了感の良い本ではなく、切なくて、また、真実を知った後にもう一度読み返したくて、読み終わった深夜から朝まで眠れなかった。
イシグロ作品は残すところ2冊かな?
大事に大事に読みたい。
***
カナダに到着した時、お義父さんが送ってくれた本と、大好きなシャーマンアレクシーの新作が次に読むもの。


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