唔同

 香港に帰ってきた。実家では母の誕生日を祝ったり、高校時代の友人にあったりした。家族や友人に会うのは楽しいし、それだけでいいならばずっと留まりたいけれど、やっぱりわたしは日本に帰るとどうしても呼吸がしにくい感覚になる。とくに空港などの多くの人が集まる場所ではすごく気が張る。こんなふうに緊張することはカナダや香港ではないので、やっぱり自分の日本での経験からくる反応なのだろうなと思う。


 

香港では難しいことが多い。なんでも読み解きの時間がかかるし、これほど「ローカル」と「メインランド」と「インターナショナル」の区別がぱっきりしているのも珍しいと思う。地元の人、 中国本土からの人、そしてそのほかの外国人。外国人でかたまってコミュニティがあるので、学校や病院などの利用期間もその属性で別れているように感じる。外国人のなかにもまた大きな「ヘルパー(住み込みドメスティックワーカー)」グループがあり、そこでの格差も大きい。

自分たちのことを「エクスパット」と呼ぶ外国人コミュニティ(主に欧米系)が利用するサービスはほぼ英語で提供され、お金さえ出せば、広東語を話さずとも何不自由なく生活できる。この人たちは自分たちが短期滞在者であり、近いうちに香港を離れることを予定している場合がほとんどのような印象を受ける。わたしたちもここに入る感じではあるけれど、ただ、マイケルのキャリアによっては香港での終身雇用もあり得るので、わたしはなるべくこの円から出て、ローカルの円に入る機会を逃さないようにしている。

香港に来てからというもの、とにかく時間がない。それは子供の学校のお迎えの時間がカナダや日本在住のときよりも早いというのがひとつと、香港英語に慣れないため情報の読みときにいちいち時間がかかるというのがあるかもしれない。香港の英語は、北米の英語よりもイギリスの英語よりだし、独特の言い回しがあるような気がするし、しかも文書に並ぶ英単語の量が多い。英語で話すときも、発音や語順が独特で聞き取りに苦労することもしばしば。広東語の語順を学んでからは、こちらの英語の聞き取りが少し楽になったけれど、それでも電話などは億劫になる。

情報の読みときだけでなく、システムの読みときにも時間がかかる。病院はどこに行き、学校はどこに通わせ、税金はどのように納め、学校に持っていかせるスナックはどのように準備し……すべてが手探り。カナダでもそれは変わらなかったけれど、やっぱり言語の理解があったし、冒険してその土地のことをいろいろ理解する移住初期に子供がいなかったので、フットワークが軽かったから、ずっとやりやすかった。そしてカナダに移民したときは、英語ができたのですぐにネットワークが広がった。ボランティアや就労もしやすかった。香港はすべてが今までのようには進まない。

ありがたいことに優しい人たちに恵まれて、ここで暮らすこと自体は好き。海のそばでの生活も気に入っている。けれど昨晩は、漠然とした不安や焦りに包まれて眠れなかったよ。

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