今月の絵本④ "It is well, with my soul"
7月の絵本は"Harlem's Little Blackbird"
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Blackbirdという鳥が好きだったので、選んで、読み始めたら、
しょっぱなから"slave"という単語が出てきて、面食らった。
小さな子どもの絵本で奴隷制について書くのかーー??とちょっとびっくりしたから。
最初のシーンで、主人公の女の子フローレンス・ミルズは、奴隷の両親のもとに生まれ、とても小さくておんぼろの家"a teeny-tiny, itsy-bitsy house"に住んでいることがわかる。
あまりにも粗末な家で、嵐が来たら、家が壊れてしまうんじゃないかと思うくらい。
怖がるフローレンスに母親が、つらいときに先祖代々歌ってきた歌を教え、雷の音が大きくなるほど、大きな声で歌えば、歌の力は雨まで止めるのだよとローレンスに教える。
"Thou hast taught me to say.
It is well, it is well, with my soil."
(神よ、あなたはこう歌うよう教えなさった。
健やかである。健やかである、私の魂は。)
フローレンスは母親とこの歌を一緒に歌い、雨が止んだときに
If my voice is powerful enough to stop the rain, what else can it do?
(私の声で雨をやませることができるなら、他にどんなことができるだろう?)
とフローレンスは問いかける。
この問いが絵本のストーリーのドライブになっている。
読みすすめるうちに、年代などの詳細さから、この絵本は実在の人のことを書いているのだなということが分かってくる。
フローレンス・ミルズ(1896-1927)。

ワシントンDCに、もと奴隷の両親にうまれ、歌や踊りに夢中な子ども時代を送る。6歳で姉妹達とThe Mills Sistersとしてデュエットデビュー。まだ人種差別の色濃かった地域でも一躍人気者になる。
その後、ニューヨークに家族で移住。姉妹達は音楽をやめたが、フローレンスはその世界で生きていくことを強く決意し、活動を続ける。1921年、ハーレムルネッサンスの舞台となったブロードウェイ、Daly's 63rd Theatreの"Shuffle Along (1921)"にキャスティングされ、その名前が知られるようになり、ヨーロッパからも招待の声がかかるようになる。
帰国後、ブロードウェイで主役を張らないかという声が、ブロードウェイの大物プロデューサー、ジーグフェルト・ジュニアからかかるも、差別で日の目を見ない黒人のアーティスト達の力になりたいと、断り、他のショーで活動を続けていく。
Blackbirdsというショーで、彼女は人種差別について歌い、平等を求める。(下のシーン)
”私の肌の色はあなたのそれよりも黒いけれど、あなたと同じ心を持っているわ。
(中略)私はブラックバード。あなたと同じように、幸せの青い鳥を、探し求めているの。”
結核でフローレンスは32歳という若さでこの世を去る。
この絵本は、"健やかな魂"を持ち続けようと邁進した彼女の短いけれど、たっぷりとした一生を、かわいらしいイラストとリズミックでやさしい言葉でつづる。
この本を「子ども向け」だと思って開いたけど、私自身学ぶことが多くあった。フローレンス・ミルズの歌声は録音されて残っていないらしい。
どんな歌声だったのかなあ。思いをはせながら、もう一度ページをめくろう。(本文引用訳:きつね)
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