カナダ先住民に対する偏見

「カナダの先住民は税金払わない」

と日本の人が話しておりました。
カフェで。

いや、払うわい。

そして先住民の人たちをけなす彼女達。

「ひどいことされても、昔のことなんだからもう忘れればいいのにね」
「いつまでも被害者面で、他の人の税金で恩恵受けるって迷惑」

今もひどいことあっとるわ。昔の話じゃないわ。

イライライラ。

私は先住民の人にすごくお世話になって、
彼らからいっぱい学んで、
トロントで生活しているので、

事実に基づかない、偏見交じりな悪口が
さも事実のように伝えられてるのをみると、


すっごくむかつきます。
怒りで体が震えます。

でも、結構こういうの聞くんだよね。

すごい悪口をばしばし言いながら、
「聞いた話なんだけど」とか
「ほんとかどうかは分からないんだけど」とか
言うの聞いてると、ほんとに、悲しくなってくる。

調べてみてください。
「これ、本当にほんとかな?」
ネイティブセンターなどに出向いて、実際に話をきいてください。
自分の情報のソースが偏っていないか、チェックしてください。



てゆーかまずね、色々税金の種類あるのに、全部を先住民全員払ってないって、
ほんとにそんなのあると思ってるのが驚きだよ。

「インディアンステータス」という法的なカテゴリーがカナダには存在し、
そのステータスを持つ人がステータスカードを持っています。
このステータスは「インディアンアクト」という法律によって定義されています。
先住民人口をうまくコントロールし、同化させたいカナダ政府が作った法律で、
今もしっかり機能しています。
誰もがこのステータスを持つわけでなく、先祖を証明する作業が必要で、
多くの場合困難なので、自分を先住民と認識していても、ステータスを持っていない人はたくさんいます。


☆インディアンアクトはこちら

ステータスカード保持者の一部の税金が免除になるのは本当です。
それはほとんど、リザーブでの話。
リザーブ外でそういう権利がある人はとても少ない。
私の友達がステータスカードをお店の人に見せたら、すごくいやな顔されたとか、
お釣りを渡してもらえなかったとか悲しそうに話していました。

☆ステータスインディアンについて知りたい人はこちら
☆ハロウィンのときに書いたファーストネーションについての記事はこちら

そのステータスを持つことで、税金を払わないことは「恩恵」なんですか?
土地を奪われて、親も寄宿学校で虐待され、トラウマで死んだけど、過去のことで、税金免除だからもう立ち直れってか?


Give me a break.

しかも、過去の話じゃないのだ。

今も多くの先住民の人たちが、公害や貧困に苦しみながら、
「第三世界」と呼ばれるほどの暮らしを送ってること知っていますか?

☆そのほんの一例オンタリオの公害に苦しむGrassy Narrowの記事はこちら

国連がカナダの現在抱える様々な先住民に対する問題に対し、調査したいと申し出ているのに、ハーパー政府はその調査団さえ国に入れないことを知っていますか?
☆記事はこちら


この
「カナダの先住民は税金払わない」という偏見、
カナダ人の中にも多くあります。

だけど、確実に変わってきています。
Idle No Moreをはじめとする運動がカナダから世界的に広がっています。
☆Idle No More Toronto Facebook Page はこちら
☆先住民メディアIndian Country Today Mediaはこちら


ウェブ・カヌーというCBCのジャーナリストでもあり、詩人、ラッパー、学者でもある先住民の人が、先住民に対する「あるある」5つの偏見を、とても簡単に、でも皮肉たっぷりに説明しています。


訳をあとにつけたので、
そして短いので、
話もうまいので、
お願いだから、みてください。

お願いだから、何も知らないまま、
hatefulな噂を真実のように、撒き散らさないで下さい。

ちょっと強いトーンで書きましたが、あまり日本語でカナダのファーストネーションについて書いてあるウェブサイトも少ないので、これから折に触れ、情報を発信していけたらと思います。





やあ、カナダのみんな。ウェブ・カヌーだよ。今日は少し真面目な話をしたいんだ(*訳注、下に記載)。先住民に対して、これから5つのことを言うのをやめてもらいたい。

1.酔っ払い:僕達と君たちの違いはお酒を飲むか、飲まないかじゃない。違いは、貧困なんだよ。君たちもお酒を僕らと同じように飲むけど、カーリングクラブで泥酔できるよね。ニッケルバックのコンサートかもしれないね。でも僕達は路上でしかできない。それは恥ずべきことだけど、気持ちがいいんだよ・・・。

2.忘れてしまえ:「もういいじゃん」「乗り越えろ」ってみんな言うんだ。だけど、僕の中ではもうとっくに乗り越えてる。父は寄宿学校で、クリスチャンの修道女にレイプされた。それももう、乗り越えたよ。だけど、乗り越えることは、忘れることと違うんだよ。

3.長い髪のやつら:先住民の人で髪が長い人はたくさんいる。文化的誇りの象徴として。きれいで長いストレートな黒髪。そんな先住民もいるし、僕のようにくるくるパーマのオジブエネーション出身の先住民もいるんだ。白人の発明したものでヘアークリッパーは鏡の次に役立つものだよね。

4.70億円:「70億円どこいったんだよ?」ってよく聞かれる。「70億もくれてやったじゃん。何に使ったわけ?」って。知っておいて欲しいのは、そのお金、ニューブランズウィックと同じ人口に使われるってこと。ちなみにニューブランズウィックは80億もらうんだけどね。だけど、一度だってきいたことある?「おい、ニューブランズウィック、80億くれてやったやつ、どうしたんだよ?」って。

5.税金:最後に話すのは、税金のこと。みんな大好きだよね、この話。聞いてビックリしないでね。僕はステータスインディアンだけど、所得税払うし、消費税払うし、しかも皮肉なことに土地譲渡税も払ったことあるよ。

ね、こんなふうに、全部大きなステレオタイプなんだよ。「先住民はタダ乗りしてる」ってさ。

最後の条約が政府と先住民で結ばれてから140年。僕達はずっと、いつ政府が約束を果たしてその条約を守り、一緒に土地を分け合えるのか待っているんだよ。

「タダ乗り」してるのは一体どっちだと思う?

(訳注:はじめのところ、直訳すれば「君の恋人じゃないけど、隣にいてもかまわないかな」という感じになる。これは、ナルシストでこんな台詞を言ってるわけでなく、この番組のホストジョージ・ストロンボロンポリスさんのお馴染みの台詞"This is your boyfriend, George..."をもじったもの。ジョージの明るい感じを期待してこの番組を見てくれてるのかもしれないけど、ちょっと違うトーンで話しますよ、という前置きの役割があるので、あえて直訳しませんでした。)




コメント

  1. kitsuneさん
    こんにちは。怒りのお気持ち、よくわかります。オーストラリアでのアボリジニへの偏見も、似たようなものですね。偏見は無知からきます。そして、無知であることは罪だと思っています。マジョリティーのカナディアン(あ、日本人も?)がファーストネーションに偏見を抱くのは、現在の彼らの姿を外側から見た時の本能的な嫌悪感からくるものでしょう(アルコール中毒など)。そこから先、「なぜ?」と掘り下げて考えられるかどうかは、人間力の差もありますが、教育や啓発も大切。しかし悲しいかな、自国の歴史を客観的で多角的な視点で教育できている国って少ないですね・・・。
    残念ながら、私の相方もファーストネーションにあまりよいイメージを持っていなくって。侮辱的な発言をしたりはしませんが、kitsuneさんのおっしゃるとおり、知識も間違っているような・・・。(寄宿学校が90年代まであったこともどうも知らないっぽい) しかし私も十分な知識を持ってないので、お互い知識が深まらず。でも、私が知識をつけて、徐々に相方に伝えていきたいと思ってます。
    色々はってくださったリンク、時間ができたときに見てみますね。今、実は勉強していて(たいした量ではないのですが)、毎日時間に追われているので・・・


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  2. kitsuneさん 補足します☆ 「過去のことなんだからもう忘れればいいのに」とか「Get over it」的な発言もよく耳にしますが(ファーストネーションの問題に限らず)、私はそれを聞くたびに、「レイプの被害者に同じこと言える?」といつも思います。

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    1. noanoaさん、こんにちは!コメントをありがとうございます。
      First Nationsのことは背景が複雑で、ちょっととっつきにくいところがありますよね。植民の歴史、そしてその過程でメディアや教育を使って、First Nationsの人たちが不利益をこうむることを"Normalize"してきた結果が今、大半のカナダ人がFNに対しあまり関心を抱かない、偏見を持つことにつながっています。メディアの偏り方もすごいですよね。こういう構造は日本の在日の人たち、また、アイヌの人たちに対しても節々で見受けられますよね。
      この”Get over it”という台詞も、本当に多くの人に使われます。要はVictim Blamingなんですよね。傷ついた人を、傷ついたことでまた責めて、どんどん追い詰めていく。本当にやるせないです。
      私は甘いとか、左とか、「非国民」とか、なんと言われても、やっぱり大きな構造によって隅に追いやられている人の状況や、立場、言い分をなるべく理解できるように努めて、ちゃんと行動できる大人になりたいなと思います。知らないまま、Oppressive structureに加担することだけは避けたい、と言いつつ、もう既にカナダでそれなりの生活をしていることは、搾取や植民支配の上に成り立っているものなので偽善かもしれないけど、こういうことを考えることをやめたくないですね。

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  3. 現在のFirst Nationの方たちの抱える失業率やアルコール中毒の問題は、背景が複雑で一言でまとめらえるものではないので、ほんとに難しいですよね。私はこの国で育ってないので、カナディアンがどういう成長過程を経てFirst Nationの人たちに対するイメージ(&偏見)を固定化していくのかわかりませんし、たかだか数年しか住んでないうえに知識もあまりないので、今の時点ではあまり大きな声を上げていく自信はまだありません。ただ、Kitsuneさんがカフェで見かけた日本人のように、よく知りもしないのに「迷惑」とか「忘れろ」とか口にするのは、傲慢だな、と思います。
    ところで、私も「多分周りは私のこと左って思ってるんだろうな」ってよく思うのですが、私自身は、右とか左とかどうでもいいし、自分は左でも右でもどっちでもないと思ってます。リベラルでもあり保守でもあり、革新を好むけど伝統も大切にしたい。民主主義万歳だけど、皇室ご一家にも敬意を払う。右とか左とかカテゴライズすること自体、安易で危険な考え方だな、って気がします。なので、Kitsuneさんもご自身の納得いく道を進んでください、誰にどう思われようと。

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    1. noanoaさん、ありがとうございます。
      私の場合、学部での論文が先住民文学であったこと、アメリカで先住民のリザベーションでボランティアしていたこと、また、カナダで書いた修士論文が新しい移民と先住民についてなので、もともとこのこと、また、コロニアリズムに対してすごく興味があるんですよね。特に、自分がカナダに移民するに際し、カナダ政府のみに許可を取って、First Nationsに許可をとらなくていいのはどうなのかとか、そういうことを考えることから始まりました。自分も'settler'である認識から、そして、将来もカナダで暮らしていく、また、もし子どもをもつことになれば、その子が育っていく社会で自分はどういう責任を負い、どう果たしていくべきかを考えるようになりました。身近に苦しんでいるFNの人がいて、歴史的、また現代の問題を噛み砕いて教えてくれるFNの先生がいて、と問題が直接感じられることも大きいかもしれないですね。カナダは新しい移民が多いので、その人口が持つ政治的なパワーって大きいと思うんですよね。自分の知識や認識も批判的に省みながら、それぞれができるところで、少しずつ動いていけたらいいですね。

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