バスキアなう。
今、 AGOでジャン=ミシェル・バスキアの展示があっている。
(バスキアットと発音する人もいます。)
画像はブログTOより
彼は1960年に生まれ、1988年に27歳という若さでこの世を去るまでに
1000点以上のペインティングと、1000点以上の描写画を残し、
今ではピカソやゴッホと並ぶほど、歴史的に果たした役割が大きいと評されるほど。
私は彼のこと全然しらなかったけど、
マイケルが絶対に展示を見に行こうと言うので、お誕生日の日に連れて行ったもらった。展示のオープンの日だったから、たくさんの人。
チケット売りの人もとても興奮していて
「空気が違うよ!バスキアの展示室は空気が違う!」
って目をきらきらさせていた。
展示室に入ると、
その瞬間、
圧倒された。

画像はGirt About Torontoより
この人のアート、心をぐいっとつかむ力がハンパない。
視覚的にとっても目に優しいというか、
ぎらぎらしてるのに、心にすっと入ってくる。
ポップアート、
歴史、
人種問題、
パーソナルなできごと、
全部がミックスして表現される。自由に見えて、綿密に計算されているような、
とても不思議で中毒性の高いアート。
展示の中で作風が全く違うものがいくつかあって、
ワーホールとのコラボレーション、
マドンナとの浮気、
幼少期の交通事故の記憶、
友人をヘイトクライム、警察の暴力によって亡くした悲しみ、
黒人であること、そのルーツへの誇り、
様々なテーマと当時の状況がキャンバス、窓の枠、いっぱいにあった。
ヒエロギリフみたいなモチーフがたくさん。
中でも王冠はメインストリームが見ようとしない黒人の偉大な人たちに王冠を自分が捧げる、という意味がこめられていたみたい。
すごく響いた展示だったので、本を読んだり、ドキュメンタリーを見たりしてみた。
「ラディエント・チャイルド」というドキュメンタリーはシネマとグラフィーがとてもかっこよく、ジャズ、ブルースを挿入曲としてそえながら、バスキアを当時から知る人たちへのインタビューを軸に彼の生涯を伝える。バスキアは本当にかわいらしく、はつらつとしていて、魅力的。
17歳で中産階級の家を出たバスキアは、ニューヨークのストリートに住むようになり、まずはグラフィティアーティストとして話題を集める。
そのセンスに惚れたギャラリーのオーナーが、絵をキャンバスに描くよう助言し、金銭的な援助を与え、そこからバスキアの怒涛の快進撃が始まっていく。みるみるうちに頭角を現したバスキアはアメリカにとどまらず、ヨーロッパ、そして日本でも展示を行う。若干21歳。
どんどん登っていくキャリアの裏で彼は、名声と、お金、それに群がる人たちに翻弄されるようになる。精神病院に入っていた母親、確執のあった父親は頼れず、自分のアートを金と簡単に換え、利用しようとする友人も次第に信じられなくなり、孤独を深めていく。
その中でメンター、父親のような役割になったのが、アーティストでバスキアの才能を認めたアンディー・ワーホール。二人はとても親しくなり、共同展示をおこなうまでに。しかし、メディアは心ない言葉を彼に浴びせ、バスキアはハワイへ旅立つ。その間、ワーホールは病気のため突然死んでしまう。
失意にくれ、バスキアはヘロインに深く依存するようになる。
そして孤独の中、オーバードースで死んでしまう。
彼の存命中の最後の展示は、皆圧倒されながらも、不気味な死の影を感じ取ったという。
ドキュメンタリーを見ながら本当に悲しくて、きらきら瞳を輝かせて創作活動に没頭していた彼と、最後にヘロインのために顔に湿疹ができて痛々しい様子の彼が信じられないくらい対照的で心が重たくなった。短い間にこれだけのエネルギッシュな作品をつくり、本当に早くこの世からいなくなってしまった。
*ドキュメンタリー予告編*
「ブラックアーティスト」であることがどれだけ困難であるかについて彼は触れていた。白人にとって、自分がすべての黒人を代表するものとなり、そして消費される。
AGOで「なぜ今バスキアットなのか」という問いかけがポスターになっていた。
アメリカ各地でおこっている黒人に対する差別的な暴力。マルコムxが暗殺されて昨日でちょうど50年だった。その頃から、何が変わり、何がまだ変わっていないのか。トロントに黒人の友達多いけど、これだけコスモポリタンで人種差別はないと言われているトロントでも、彼女たちは差別に直面して生きている。よく「カナダには奴隷制はなかった」というのを聞くけど、それは嘘で、カナダにも奴隷制は存在した。
今バスキアを見て何を感じることができるのか。
彼が今生きて作品をつくるのなら、一体どんな作品をつくるだろうか。
そんなことを考えながら、もう一度展示を見に行こうと思う。
展示は5月10日まで。展示数も豊富です。
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