震える肩に置かれる手

私にはホームレスの友達がいる。

スケートリンクで知り合った彼女は、家庭内暴力の被害にあって、ホームレスになった。
シェルターに大部分の人が住むけれど、それも含めトロントには30000近くのホームレスがいると言われている。

最初、家を出たとき彼女はうちに滞在していて、でも長期になって私達にはどうすることも出来ず、女性のためのシェルターを探し、彼女はそこで暮らすことに。だけど、闇の中にも闇がある。ホームレスの人を助けるはずのシェルターで、そこに住む居住者に対するいじめ。人が集まるところには、何かしらそういうのが作り出されるのかな。高齢者で新移民の英語のつたない彼女はターゲットになり、本当につらい日々。

この数ヶ月、彼女の新しく住むところを見つけつつ、シェルターの問題をどうにかできないか探りつつ。そして先日、彼女に新しいアパートが決まり、長い間見なかった彼女の笑顔を見た。

ほっとしたのも束の間。今朝、電話でシェルターを追い出されたとの知らせ。
どう考えても、不当強制退去。いじめの最後のブローみたい。
うちに来てスープをすする彼女。怒りと悲しさと、支えの無さで、一度涙を流したら崩れて立ち上がれなくなりそうで、精一杯自分の中に押さえ込もうとする彼女の肩が震えていた。

シェルターに電話する。直接話しても埒が明かない。Board of Directorsに抗議の手紙を書き、そのシェルターの資金源の団体をあたることにする。彼女は「私のような思いをする人をつくりたくない」と言った。虐待を受けてホームレスになった彼女に、もう一度ホームレスになることを脅しに使うなんて、本当に卑劣。

これからの流れを説明し、ケースワーカー、ソーシャルワーカーに電話。なんとかなりそうだ。

彼女の帰宅後、ぐったり疲れた。あまりの不公平さに涙が出たし、自分にできることの少なさが情けなかった。新移民のおばあちゃん。私だけがトロントで頼りなんて、なんだか、きつい。

色々手伝ってくれたマイケルが、

"The most important thing in life is to be kind to people. That's why I love you."

と肩に手を置いた。

私には、震える肩に温かく触れてくれるマイケルがいる。

彼女には誰もいない。

少しのぬくもりになれますように。一番つらいとき、電話の先にいれる自分でいれますように。

火曜日、クラスメイトのシェルターシステムで働く人に話を聞きに行こう。何か良いアプローチのヒントがあるかもしれない。


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コメント

  1. きつねさん、こんにちは。記事を読ませていただきました。
    私にはホームレスではありませんが、環境や状況的にひとりの友達がいます。
    世の中には、きつねさんの言うとおり、人生いろいろ、苦しんでいる人っているんですよね。私の環境や状況からは把握できないくらいに苦しんでひとりの人っているんだと感じました。
    私はブログで「ひとり」と書いてしまいましたが、そんなことはなくて、家族がいたり兄がいたりします。
    自分はなんてぜいたくなんだと、本当に痛いくらいに思いました。
    私は実際に過酷な渦中にいる人と出会っていませんが、思いはきつねさんと同じです。
    身近な人から(私の友達のような。)助けてあげたい、支えになってあげたい、お役に立てれば・・・と謙虚な気持ちで接してあげたいと思いました。
    話を聞くってエネルギー使うし、本当に疲れますよね。
    でも、きつねさんのその思い、お友達に伝わっているのではないでしょうか。心のパワーはきっと伝わっていますよ。
    私もどんな状況や環境のお友達であれ、「友達、友人」として一人の人としての尊厳をもっているということ、心に留めてお付き合いしていきたいと思いました。

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  2. よつばさん、
    コメントをありがとうございます。

    私の友達は、苦しい状況にいるけれどとてもたくましくて、強い人なので、私の手なんて無くても、大丈夫だと思うんです。だけど、もし頼りたいと思ったとき、そこにいれる私でいたいなと思います。結局、どんな苦しい状況も立ち上がって打破するのって本人しか出来ないと思うんです。

    だけどその過程が、周りの人の声やぬくもりで少しでも軽くなるのなら、そのちょこっとになれればと思っています。

    でも、自分の心のバランスも大事なので、無理はしないように心がけています。

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